机の下へ黒い箱を入れ、線を全て隠した。見た目はよくなった。プリンターを一台外そうとすると、どの線か分からない。
私は、見えなくなったことを整理とは呼びたくない。何が何につながっているかを知っていて、必要な時に一本を追える。それが分からなければ、配線ではなく隠し場所を作ったのである。
使用中・持ち歩き・予備を最初に分ける
機器を安全に停止・取り外せることを確認し、使用中の配線、携帯するケーブル、未接続の予備に分ける。電源や業務機器をむやみに抜かず、取扱説明や職場の管理ルールに従う。
- 使用中:接続先が追える経路を保つ。
- 持ち歩き:使う機器と一緒に確認できる場所へ。
- 予備:対応機器・用途が分かる形で別に保管。
使っている線の間へ、昔の端末の線まで通しておくと、全員が現役に見える。予備だから悪いのではない。出番のない線と、抜いたら困る線の区別が、持ち主にもついていないのが困る。
堀内恒夫が語った、長嶋茂雄との三塁牽制の話がある。指を出したら牽制、という打ち合わせをしていた。試合中、長嶋が指を出して自分を呼んだので堀内が三塁へ投げると、そこに長嶋はいなかった。送球はそれて一点を失ったという。
長嶋の方は、堀内を励ますために向かったつもりだった。打ち合わせた形と、本人がそのときにした動作が重なったのである。私は、この話から長嶋へ札を付ければよかったとは考えない。ケーブルの表示が読めるようになっただけで、人の動きを読める資格まで付いてくるわけではない。
ラベルは、線の両端から同じ接続を追えるようにする
見た目だけで識別しにくい線には、機器名や接続先など同じ手掛かりを両端へ添える。通気・可動部・端子や放熱部をふさがず、傷めない方法で表示する。
| 記録する項目 | 架空の記入例 |
|---|---|
| 接続 | ノートPC―外部モニター |
| 用途 | 映像出力用 |
| 予備の対応先 | 旧カメラA用。PC用とは別保管。 |
端子が同じでも、充電・データ転送・映像出力の対応が同じとは限らない。規格や出力は製品の表示・説明で確かめ、形だけで使い回せると決めない。
線に一番、二番と札を付けた。それで何につながるか分からなければ、分からないものに順番が付いただけだ。表を別の引き出しへしまって、必要な時に表の場所から探すこともある。
サインが出たという形だけで送球しても、受ける相手がいなければ困る。上司の了解も同じだ。一つうなずいたから全部決まったと思う担当者と、うなずいただけだという上司がいる。私は、その上司の曖昧な了解へ先に札を付けたい。
電源コードは、きつく束ねたり巻いたまま使わない
電源コードや延長コードを束ねたまま使うと、放熱しにくくなり発熱・発火につながるおそれがある。定格容量を守り、家具で踏む、強く曲げる、無理に引くなどの扱いを避ける。
異常な熱、焦げ、変形、被覆の傷、緩みなどがあれば使用を中止し、販売店やメーカーへ相談する。コードを自己流で継ぎ足す・修理する方法は扱わない。収納用品へ隠す前に、機器と用品それぞれの安全上の条件を確かめる。
私は、見た目の都合で安全を後へ回すつもりはない。箱へ収めると完成写真は撮りやすいが、その箱の中に何を詰めたかまで消えるわけではない。
昔のサインの話を持ち出したからといって、電気の安全まで気合で済むとは言わない。分からないのに分かった顔で指示する管理職こそ、先に止まるべきだ。道具の説明を読まない者が、部下の理解不足だけを細かく指摘する資格はない。
使っていない線は、用途を確認して別にしまう
取り外したケーブルは対応機器と必要性を確かめ、傷めない緩やかな形で保管する。用途不明なら推測で差し込まず、仕様を確認する。廃棄は自治体や回収先の区分に従う。
机全体の置き方はデスクを整理する方法で扱っている。線を外した際には、接続先のメモやラベルも見直し、既にない機器の名前だけが残らないようにする。
何年も出番のない線を全部残すのも、用途を見ず全部捨てるのも、調べていない点では似ている。私が見たいのは箱の軽さではなく、残した理由である。
ただし、長嶋の動きを見間違えた話を聞いて、長嶋を分かりやすい印一つで管理すればよかったと言う者には賛成しない。札で分かる線と、見てきた者にしか分からない動きは違う。便利な分類ができたからといって、分かる側の経験まで不要にはならない。
まとめ
使用中・持ち歩き・予備を分け、接続先を両端から追える状態にする。電源コードを束ねたまま使用せず、仕様・容量・傷みを確認して安全を優先する。
堀内は打ち合わせた指を見て投げた。長嶋は励まそうとしていた。合図を一つ決めれば人間まで一つの動きにそろう、という考えには、昔からそれだけでは済まない場面があったのである。
ケーブルには、両端を確かめて表示を付ければよい。ただ、整理した若い管理職が、これで古参の判断も全部一覧へ置けると思い始めるのは感心しない。線を区別する仕事を終えたことと、誰の説明を残すかを決める仕事は別である。
昔からその機器を使ってきた者の話が表示と重なるなら、表示の方を読めば済むという部長もいる。私は、そういう部長にこそ口で説明しておきたい。札は黙って待つが、教えた者にまで黙ってもらう必要はない。
配線を隠した後でも、その説明を聞く時間は表へ出しておく。古参の話が長くなったなら、整理する側の予定を延ばせばよい。線が短くまとまったからといって、聞く者の修業まで短くなったことにはならない。











