ご都合のよい日を教えてください、と送って、相手から同じ言葉が返ってくる。互いに気遣っているようで、まだ一つも日時が出ていない。予定を調整するメールが、調整の開始を待っているのである。
私は、便利な調整ツールにも反対しない。ただ、誰と何のために会い、どれだけ時間を使うかもないまま、空き枠だけ選ばせるやり方には感心しない。
候補日と一緒に、目的・長さ・場所を伝える
社外の打ち合わせでは、目的、複数の候補日時、所要時間、場所やオンラインの別を示す。必要なら相手に候補を出してもらう方法もあるが、何時間を空ける依頼か分かるようにする。曜日や年の取り違えにも注意する。
候補提示の架空例:
件名:[案件名]お打ち合わせ日程のご相談
[用件]について、30分ほどお時間をいただけますでしょうか。オンラインで、次の開始時刻を候補にしております。
・[年・月・日・曜日]10:00
・[年・月・日・曜日]14:00
・[年・月・日・曜日]11:00
いずれも難しい場合は、ご都合のよい時間帯をお知らせいただけますと幸いです。
終日空いていますという返事を、相手が終日使ってよいと読むと困る。開始と終了の見込みをそろえるのは、細かいからではない。双方が同じ予定を持つためである。
牛島和彦は横浜の監督になった年、キャンプへ入る前、三浦大輔の部屋まで出向いて開幕投手を伝えたと語っている。翌年も一月末に直接伝えた。早く照準を置けば、選手は開幕から逆算して準備ができる。呼びつけるのでなく自分が訪ねたのは、頼む側だからという考えだった。
私は、日程調整の欄を一つ送って、ベテランへの説明も全員同じに済ませたという部長を、それでよしとはしない。誰が誰へ出向くかを決める仕事は、空いている日を塗る仕事より先に残っている。
候補が全て合わない場合は、代わりを示す
提示された候補が難しいと伝え、お礼や事情の説明は必要な範囲にとどめる。可能な日時や時間帯を代わりに示し、所要時間や実施方法を変える必要があれば相談する。無理な日を曖昧に仮承諾しない。
架空例:
候補日をご提示いただき、ありがとうございます。恐れ入りますが、いずれも予定があり調整が難しい状況です。
[別の候補日時A]または[候補日時B]でしたら、30分のお打ち合わせが可能です。ご都合はいかがでしょうか。
難しい場合は、別の週も含めて相談させてください。
全部無理です、とだけ返せば、その先の調整は相手の仕事になる。反対に、難しいのに大丈夫そうですと返せば、確認の往復が増える。私は、配慮とは結論を隠すことではないと考える。
ただ、古参の空き時間まで、全員同じ投票欄へ入力すればよいという扱いには納得しない。牛島が三浦へ部屋まで出向いて伝えたという話にも、頼む側の姿勢が見える。目上なら必ず訪ねろという規則ではないが、人の扱いを全部同じ欄へ畳む必要もない。
確定連絡では、一つの予定をまとめ直す
双方の合意を確認したら、日時・所要時間・場所や参加方法・目的を一通にまとめる。仮押さえを確定と混同せず、オンラインの参加情報が後送なら、誰がいつ案内するかも確認する。
架空例:
日程のご確認をありがとうございます。以下でのお打ち合わせ、承知いたしました。
日時:[年・月・日・曜日]14:00〜14:30
方法:オンライン[使用方法]
目的:[確認する事項]
参加情報:[案内方法・時点]
当日はよろしくお願いいたします。
了解しましたの一行だけでは、どの候補を了解したかが残らないこともある。私は、相手が前のメールを探して組み立て直さなければ分からない確定連絡を、簡潔とは呼ばない。
開幕投手の通告を受けた者が、どの日の何を任されたか分からないまま準備するわけではない。巨人でも他球団でも、出番が決まったと言う以上、そこは曖昧にしない。予定調整だけ便利になって、この確認が省かれるなら順序が逆である。
変更と催促は、新しい状態が分かる連絡にする
決まった後の変更は、元の予定と変更したい内容、代わりの候補を明示して再度合意する。返答がない時は、相手の確認時間や社内ルールに合わせて連絡する。回答前に候補を確定扱いして招集しない。
日程に返事がない場合の文面は催促メールの記事で扱っている。候補を複数の相手へ同時提示するなら、重複した確定が起きないよう、自分の予定も更新する。
予定を変えたのに、招待だけ古いまま残す。メールでは直したという。相手が当日どちらを見るかは、送った側の都合だけでは決まらない。私は、連絡したことより、同じ予定へ直ったかを見たい。
まとめ
候補提示で目的・長さ・方法を示し、合わない時は代案を返す。決まった日時は一つの予定にまとめ直し、変更時も再合意する。仮押さえと確定、連絡済みと共有済みを分けて考える。
牛島は三浦を呼んで空き日を尋ねたのではなく、自分が部屋へ出向き、開幕を頼んだ。準備する照準と、頼む側の姿勢が一緒に渡っている。私は、その一往復を全部同じ予約欄へ縮めるつもりはない。
会社の予定も、日時と用件がそろえば実務の連絡は短くできる。ただ、長く支えた者の予定を後から一覧へ足して、空いていましたから決定ですという部長には、決める前の説明が残っている。
古参へ聞くために部長の往復が一つ増えても、若い担当者の候補メールが増えたわけではない。私は、その時間を調整の失敗とは数えない。頼みに来るべき人間が、ようやく一人動いただけなのである。
予定をそろえた紙は短くてもよい。しかし、誰が最初に頭を下げるかまで欄の順で決めない。昔の教えを聞く時間だけが候補から落ちているなら、私の方ではまだ日程が決まったとは認めない。











