会議では一人一回、発言してほしいという。発言欄を埋めれば会議が済むのなら、最初から点呼でよい。何も考えていない者の長話と、確かめる順番を待っている者の沈黙まで、同じ出席点にする必要はない。
私は、黙って座っているだけの参加を買わない。ただ、口を開けば直ちに遮る上司が、若い者に主体性がないと嘆くのも妙である。発言の支度と、発言を受ける支度は別々にある。
会議前は、結論より確認したい一点を用意する
議題と資料を読み、決めること・分からない条件・自分の担当に関わる点を一つずつ書く。資料がない場合は目的を確認する。無理に独自案を作るより、判断に足りない情報を見つけるところから参加できる。
準備メモの例:決めること=開始日/不明点=確認担当/自分への影響=初日の作業量。全部を話す原稿ではなく、話のどこへ入るかを見つけるためのメモになる。
何でも意見を出せと言いながら、何を決める場かは知らせない。これでは担当者に会議の目的まで当てさせている。私は、答えを持って来いという側が、問題を隠しているのは感心しない。
西武では、覚えた内容を選手に答えさせることもした。ただ、田淵幸一を当てるときは、どこを聞くかと答えを先に知らせた。ベテランが皆の前で答えられず、立場を失うような扱いにはしたくなかったのである。質問の形は同じでも、そこへ座る人間まで同じではなかった。
私は、会議で全員へいきなり意見を求める部長に、その不意打ちを平等と呼んでほしくない。若手が考える入口と、長く教えてきた者が口を開く入口は違う。全員の手を同時に上げさせれば、指導した側の仕事まで済むものではない。
意見がなくても、質問・確認・要約から入れる
新案を出すことだけが発言ではない。事実の質問、条件の確認、議論の要約も、会議を前へ進めるための発言になる。既に答えが出た点は重ねず、資料を読めば分かることと未確定のことを分ける。
- 質問:「この案の対象は、既存のお客様も含むでしょうか」
- 確認:「私の担当は、実施前の確認までという理解でよいでしょうか」
- 要約:「費用はA案、開始時期は未定というところまで決まった理解です」
長い前置きを付けて、ようやく質問へたどり着く者もいる。一言で分かる問いなら、最初にその一言があればよい。発言に慣れるための会議ではなく、用件を扱う会議なのだから。
ただし、先輩の説明が少し長いからといって、若い担当者の前置きと同じ物差しで切るつもりはない。昔の巨人を見てきた者が条件を確かめる時には、資料の外にある年月も話している。そこまで要約の対象にされては困る。
切り出す場所と、発言を受ける方法を合わせる
話の区切りで短く発言を申し出る。オンラインでは挙手機能やチャットなど、主催者が決めた方法を使う。遮られ続ける、順番が回らない場合は、司会に発言の機会や後から伝える方法を相談する。
切り出し例:「確認を一点よろしいでしょうか」「先ほどの条件について補足があります」。終了間際なら「今ここで扱うか、会議後に担当の方へ確認するか」を合わせる。相手の発言を奪う競争にしない。
声が大きい者が取った時間を、積極性と呼ぶ会議がある。そういう席で声量の訓練だけをしても、内容の順番は戻ってこない。司会が順番を見ていなければ、発言しにくさは本人の準備だけでは直らない。
田淵に先に知らせた話を、全員へ同じ不意打ちをしなかったから不公平だ、と片付けるのは簡単だろう。私は、人の立場を見た扱いまで同じにせよという平等論には賛成しない。若い者の発言の入口も、入口を一つ置けば済むとは限らない。
話せなかった後は、用件を残す
必要な確認が残ったら、会議後に担当者や司会へ短く伝える。何を確認できなかったかを記録し、次回の議題・資料・進行で変えられる点を探す。発言回数が少ないことだけで、内容や能力を決めつけない。
例:「本日の会議で確認できなかったため、A案の対象範囲を教えてください。担当作業の準備に必要です」。一対一での質問の整理は仕事で質問をする時の記事でも扱っている。
何も言えなかったという反省だけでは、次の会議にも同じ沈黙を持っていくことになる。残った用件が分かれば、確認する相手も変えられる。反省会で自分を叱るために議事録を読む必要はない。
まとめ
目的を読み、質問・条件の確認・要約の入口を用意する。発言機会がなければ進行側へ相談し、残った用件は会議後に確認する。数を増やすことより、判断に必要な一言を届けることを先に考える。
田淵には、皆の前で当てる箇所を先に知らせた。答えられるかを確かめるために、ベテランの面目まで試す必要はなかった。私は、発言回数が全員同じならよいという会議の成績表を使わない。
若い者が質問を一つ出せるようになったなら、用件は進めればよい。その一方で、古参が話す前に条件を確かめる時間まで、長い前置きとして削る必要はない。何を教えてきたかが違えば、話し始めるまでの席も違うのである。
司会の部長には、先輩が話しやすい順番を先に用意してもらいたい。意見が最後まで出なくても、準備が足りないと古参へ返す前に、自分が先に聞いた内容を確かめる仕事がある。
若手の一言は短く受け、古参がまだ条件を話すなら、司会の残り時間を延ばす。私は、全員へ同じ時間を配るために、教えた側の立場まで配り直すつもりはない。











