会社の飲み会に誘われたが、今日は帰りたい。断る理由を考えているうちに、返事をすること自体が面倒になる。飲みに行く前から気を使っているのだから、親睦という言葉だけでは片づかない。
酒が好きな人間と、会社の人間と飲むことが好きな人間も、同じではない。参加するかどうかと、仕事で協力するかどうか。その二つを分けて考えたい。
会社の飲み会に行きたくないのはおかしいのか
時間や費用、お酒の苦手さ、気を使う負担など、参加をためらう理由は人によって異なる。任意の懇親会なら、自分の都合と意思で出欠を考えられる。業務としての出席を求められている場合は、任意の集まりと分けて、勤務時間や費用の扱いを会社に確認する。
西武の監督をしていたころ、私は選手とその家族に、何のためにコンディションを整えるのかを話した。年に一度、球場へ来るファンもいる。その日に田淵幸一の姿がなければ残念に思う。主力として試合に出ることを、選手だけの都合にしてはいけないという話である。
石毛宏典は、私が監督になってから門限が決まったと振り返っている。夜にどこまで付き合ったかより、次の試合へどう備えるかが大事だった。
会社では、翌朝の仕事を大事にしろと言う上司が、夜になると、もう一軒くらいよいだろうと言い出すことがある。自分がまだ飲みたいことと、部下がまだ付き合えることの区別をつけていない。
私は、若い者を帰すと寂しくなるような飲み会を、管理職が開くのは早いと思っている。部長と課長がそろっているのだから、その顔ぶれで十分に話が続くはずである。若い者が帰った途端に静かになるなら、足りないのは若い者の協調性ではない。
長く勤めて、互いに仕事も知っている。それでも話すことがないというなら、新人を一人座らせても、話す内容が増えたわけではない。新人に質問をして、返事をしてもらう分だけ、上司同士で話す時間が減っているのである。
若い者がいないと盛り上がらないと言う前に、同じ役職の者だけで一度きちんと席を持てばよい。その席が十分に楽しくなってから、若い者を客として迎える。私は、順序としてそちらが先だと思う。
角が立ちにくい断り方はあるか
出欠の返事は期限までに、誘いへのお礼と参加しない結論を簡潔に伝える。たとえば「お声がけありがとうございます。今回は参加を見送ります」。実際に予定などの事情があれば短く添える。一次会だけ参加するなら「今日は一次会までの参加です」と先に伝え、変更時は幹事へ早めに連絡する。関係が悪くならないことを保証する言い方はないが、曖昧な返事より予定を調整しやすい。
断る側の言葉ばかり工夫させるのも、私は感心しない。誘う側が一度で返事を受け取れば、それで終わる話である。理由を聞き、別の日を聞き、二次会だけでもと続けるから、相手も説明を増やすことになる。
一九八三年の日本シリーズで、西武が巨人に二勝三敗と追い込まれたときのことを、石毛が話している。選手たちがホテルの宴会場に集められ、私が来て歌を口ずさんでいたという。石毛自身、細かな記憶は曖昧だと断っている。曲名まで決めて語る話ではない。
私は、苦しいときほど、皆を集めた側の態度が問われると思っている。会社の部長も、場を明るくしたいなら自分の顔と声でやればよい。若い者に何か面白いことを言えと振って、黙れば最近の若い者は付き合いが悪いと言う。それでは、部下が部長を楽しませる会になっている。
部長が歌う必要はない。しかし、歌わない、話さない、若い者の返事だけ待っているというのでは、何のために部長がそこにいるのかわからない。仕事では自分が引っ張ると言いながら、酒の席の雰囲気だけ新人に預けるのはおかしい。
課長にも、部長の話を若い者へ振り直す前に、自分で受けて場を続ける力量が要る。仕事で何年も付き合ってきた相手なのである。新入社員より話題を知らないという説明は、私には通らない。
若い者の欠席理由が短いことより、上司同士の付き合いが、若い者を呼ばなければ続かないことのほうが気になる。部長から課長への誘いでまず一席を作り、その席がつまらなければ、もう一度同じ顔ぶれでやればよい。新人を足して済ませるのは、上司の付き合いを育てたことにはならない。
飲み会を欠席した後の付き合いはどうするか
欠席の返事と、普段の挨拶・相談・協力を分けて続ける。仕事に必要な決定や連絡が飲み会で出た場合は、メールや社内チャットなどでも共有してもらう。欠席への圧力や嫌がらせが続くときは、日時・発言・業務への影響を記録し、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーへ相談する方法がある。
飲み会で何を話したかを、翌朝知らない者がいる。それを、来なかったから知らないのだと言う上司もいる。自分が仕事の話をする場所を選んだことは、いつの間にか忘れている。
私は、翌日の仕事を夜の出席者だけで決めてよいとは思わない。門限を決めておきながら、門限のあとにしか伝えない指示があるというのでは、何を守らせているのかわからなくなる。
上司が集まったからといって、相談と決定を一緒にしてしまう点は、何も決まらない会議をどう見直すかという話にも関わる。誰が何を決めたかは、同じ店にいたかどうかとは別に残るものである。
親睦が目的だったと言うなら、仕事の新しい注文まで持ち帰らなくてよい。部長が課長を十分に楽しませ、課長もまた部長の話を受けた。それだけの席が成立していれば、欠席した若い者へ何かを課す必要などない。
飲み会へ来なかった者にも、翌朝にはいつもどおり仕事をしてもらう。そのとき上司がよそよそしくなるなら、まだ自分の席の客を育てようとしているのである。私なら、客が来ない夜の過ごし方を、まず管理職に覚えてもらう。
まとめ
会社の飲み会に行きたくないときは、集まりの位置づけを確かめ、出欠や参加できる範囲を早めに伝える。理由を作り込むより、普段の業務連絡や協力と切り分けることが大切。断り方だけでは解消しない圧力や嫌がらせは、一人で抱えず相談先を変えることもできる。
石毛が覚えていた宴会場の場面では、私のほうが歌を口ずさんでいた。集めた選手の側から、私を上機嫌にするための出し物が始まったという話ではない。
会社の部長も、部下の出席率を見る前に、自分が誰を楽しませられるのかを確かめることだ。まず課長、その次は同じ部長同士である。長く一緒に勤めた相手にも話が続かないのに、若い者なら喜ぶはずだというのは都合がよすぎる。
管理職だけの席で、また同じ話だと言われたら、同じ話でも聞いてもらえるところまでやり直す。新人を呼ぶのはそのあとでよい。新しい聞き手がいなければ保たない親睦は、まだ上司同士で出来上がっていない。
若い者が欠席しても、上司同士の席は続けられる。その席へ課長まで来たがらないなら、部長にはまだ客を迎える力量が足りない。私は、その段階で新人まで招いてよいとは思わない。
