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仕事のメモの取り方|書いても使えないノートを見直すには

要点を分けて書いたノートとペン、古いグローブを置いた机のイラスト。

説明を聞いている間は、よくわかった気がする。机に戻ってノートを開くと、丸で囲んだ言葉が三つある。どれも重要そうだが、何をすればよいのかは書いていない。重要という印だけが、仕事を引き受けている。

私は、メモを取ることに反対ではない。覚えているつもりで何度も同じことを聞くより、残しておくほうがよい。ただ、ノートを埋めたところで説明が終わったと思っている上司も、少々都合がよすぎる。

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仕事のメモには何を書けばいいか

日付と件名をつけ、「何をするか」「いつまでか」「注意点」「未確認のこと」を短く分けて残すと、あとで使いやすい。説明をすべて書き写すより、次の作業を再現するのに必要な情報を優先する。決まったことと、自分の推測は混ぜない。

たとえば「資料を作る」だけでは足りない。何の資料を、誰に、いつ渡すのか。説明の中に答えがなければ、そこは空欄のまま疑問として残る。上司の話が長かったからといって、空欄まで埋まったことにはならない。

巨人の末次利光は、川上哲治監督から、ヒットエンドランでは内角の球でも右へ打つよう徹底して教わったと振り返っている。打撃の助言をいくつ聞いたかではない。どういう場面で、どちらへ打つのかが、教わった中身として残っている。

ノートに「打撃を改善」とだけ書いても、打席では使えない。会社の「質を高める」「意識を変える」も同じである。言う側が立派な言葉を選んだ分だけ、聞く側の仕事が増える。私なら、その上司のノートを先に見たい。

末次は、王貞治と長嶋茂雄の後ろで五番を打った男である。上に大打者が二人いるから、自分も同じように打てばよいという役目ではない。担当者の名前を入れ替えても通じる説明ばかりしていては、打順を決めたことにならない。

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聞きながら書くのが追いつかないときはどうするか

文章を整えるのはあとにして、名前・期限・数字・手順の分かれ目を先に書く。聞き取れなかった箇所には印をつけ、説明の区切りで確認する方法がある。略語は自分があとで読める範囲にとどめ、曖昧なまま想像で補わない。

聞くより書くほうが忙しくなっては、本末転倒である。上司の雑談まで同じ速さで写していたら、肝心の期限を聞いたときに、まだ昨日の出来事を書いている。話した分量が、そのまま仕事の分量ではない。

末次によれば、川上さんは打撃練習の中で、求めている打ち方に近づいた瞬間には、それがよいと声を掛けたという。何もかも褒めるのではなく、どの動きがよかったかが相手にわかる。話を聞き終えてから全部を思い出すより、その場で区切りを示すほうが明確である。

ところが会社では、説明が終わるまで質問を受けつけず、最後に質問はないかと聞く。その間に何を忘れたかもわからなくなっている。聞き方の問題を論じる前に、教える側が、何を残してほしいのかを選べているかである。

ただし、先輩の話を短くまとめる権限まで、若い者へ一緒に渡した覚えはない。重要でないと思った箇所に、まだ自分の知らない事情があるかもしれない。要点を選べるようになるまで、上司が横で確かめる。それで説明がもう一度必要になっても、上司の仕事である。

メモを取っても仕事で使えないのはなぜか

見返す場所や時機が決まっていない、必要な条件が抜けている、次の行動が書かれていない、といった理由が考えられる。説明のあとに不明点を確かめ、着手前にメモを開き、実際の手順と照らして補う。きれいな清書だけを目的にしない。

覚えたかどうかを、書いたかどうかで判定してはいけない。ノートを見せてもらうのは簡単である。そこから仕事が始められるかを見るには、教える側も席を立たなければならない。

末次が川上さんから教わったことには、打撃の技術だけでなく、ミーティングでの人間教育もあったという。最初のミーティングで聞いた報恩感謝を、長く大切にしていると話している。何ページに書いたかではなく、何を残したかを説明できるのである。

巨人の名前で仕事をする者が、昔の説明を、古い話という欄へまとめて終えては困る。新しい資料には索引をつけるのに、先輩から聞いたことは記憶任せでは、保管の順序が逆だ。探す機能を覚えるより前に、何を探せるようにしておくかを教える必要がある。

私なら、若い者に新しいノートを配る前に、上司へ、自分が教わった内容を一つ説明させる。うまく説明できなければ、上司の勉強からやり直すことになる。新人を待たせるからといって、そこを省く理由にはならない。

紙とデジタルのメモはどう使い分けるか

その場で図や短い言葉を残すなら紙、あとで検索したり更新したりするならデジタルが選択肢になる。両方を使う場合も、最終的に見返す場所を決めておく。業務情報は職場で認められた保存先に置き、録音や外部サービスへの入力は許可・社内ルールを確かめる。

紙だから熱心で、画面を見ているから不真面目だと決めるつもりはない。紙の前でよそ事を考える人間もいる。道具の名前だけで理解まで採点できれば、指導者ほど楽な仕事はなくなる。

それでも、検索で先輩の説明が一行だけ出てきて、わかったつもりになるのは感心しない。末次への右打ちの指導も、右という一文字を取り出せば済むものではない。どういう場面の説明なのかを落とせば、よく整理された間違いができる。

紙のノートを持って来た者には、前のページも開かせられる。デジタルでも同じことができるなら、それでよい。ただし、説明を聞く途中で新しい画面を開くなら、その前に、いまの話がどこへ保存されたかを私に示してからである。

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まとめ

仕事のメモは、日付・件名とともに、作業・期限・注意点・疑問を分けて残し、着手前に見返せる形にする。聞きながら全文を書こうとせず、不明点は確かめる。書いた量より、必要なときに次の行動を確認できるかが目安になる。

私は、立派なノートを持っているだけの上司より、若い者が何を書き落としたかを見られる上司を評価する。教えた話が残っているかを確かめるのも、教えた者の役目だ。

もっとも、要点が三行になったから、話した先輩の仕事も三行分だったということにはならない。その三行をどう教わったかまで説明できて、初めてノートを閉じてよいのである。

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この記事を書いた人

何事も、まず基本から。聞かれていないことにも、答えはある。

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