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クッション言葉の使い方|依頼・断り・質問の前に添える例

言葉を交わす場を表した二つのカップの水彩イラスト

「大変恐縮ではございますが、お忙しいところ誠に恐れ入りますが」と始まり、まだ何も頼んでいない。用件が玄関で靴を脱いだまま、なかなか上がってこない。

私は一言添える配慮を大切にしたい。ただ、言葉の座布団を十枚重ねれば、相手が何でも引き受けてくれるとは思わない。

目次

クッション言葉は、用件の前に短く添える

依頼や断りなどをいきなり突きつけず、相手の状況へ配慮する短い前置きとして使う。

依頼なら「お手数ですが」、質問なら「差し支えなければ」、断りなら「申し訳ありませんが」など。言葉を足した後も、何を頼むか、何ができないかは明確にする。以下は使い方の例であり、すべての相手に同じ表現が最適という意味ではない。

丁寧な前置きがあるから断れない、と思わせる使い方には賛成しない。断ってよい顔をして、返事は一つしか受け取らない。それは配慮ではなく、命令の包装である。

私は、言い方の柔らかさと用件の硬さを分けて見たい。包装紙がよくても、中身が無理な仕事なら無理だ。

依頼は、内容と期限を曖昧にしない

相手に頼む作業と希望する期限を示し、難しい場合の相談もできる形にする。

例:「お手数ですが、見積表の数量欄を○日正午までに確認していただけますか。難しい場合は本日中にご相談ください」。急ぎなのに「お手すきの際に」と書かない。「お忙しいところ」と添えても、相手の予定が自動で空くわけではない。

1988年の日米ベースボール・サミットへ向け、私は長嶋茂雄へ、その知名度を使わせてほしいと頼んだ。飾った依頼へせず、何を借りたいかを伝え、長嶋も協力した。後輩へ頼む仕事があっても、先に隠す言葉を増やす必要はなかったのである。

私は、恐れ入りますを三つ付けた部長へ、その分頼み方が上がったという点は付けない。ただ、短い依頼なら誰が誰にでも同じように言えると思うのも早い。そこまでの付き合いを持っているかは、前置きの数とは別に聞きたい。

そこに私が感心するのは、頼む側が必要なものを隠していない点だ。「少しだけ」と呼んでおいて一日分の仕事を渡すより、よほど分かりやすい。

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断るときは、断りの結論を残す

前置きの後に対応できない範囲を伝え、可能なら代替案を示す。

例:「申し訳ありませんが、今週中の対応はできません。来週火曜までであれば可能です」。代案がないときに無理に作る必要はない。引き受けられないのに「検討します」だけを繰り返すと、相手は待ち続ける。断り方全般ではなく、結論を薄めない前置きとして考えよう。

私は、相手をがっかりさせないために返事を先送りするほうが、結局はがっかりを大きくすると思う。丁寧さの借金には、返済日が来る。

誰にでも角が立たない言葉を探して、話そのものが丸くなりすぎる。転がっていって、どこにも結論が止まらない。

質問には、答えなくてもよい範囲をつける

私的なことや答えにくいことは、本当に必要かを考えたうえで尋ねる。

例:「差し支えなければ、今回の変更で困っている点を教えていただけますか」。業務に必要な質問なら目的も添える。個人的な事情を聞く場合、「差し支えなければ」と言いながら断られて不満を示さない。会話の前置きで、不要な詮索が必要な確認に変わることはない。

私は昔の巨人の話なら、聞かれていなくても答えがある。だが、他人の家の事情には、こちらが知る必要のない答えもある。

聞き方の工夫より、聞かずに済ませる判断が立派なこともある。言葉をたくさん知った人ほど、その一つを覚えておいてほしい。

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まとめ

前置きは短く、依頼の内容と期限、断りの結論、質問の目的ははっきり残す。

長嶋へ知名度を使わせてほしいと頼んだとき、私は何を望むかを隠さなかった。だが、その一文だけを切り取り、部長へ同じ頼み方の資格まで渡すつもりはない。そこへ至る年月も一緒にある。

クッション言葉は、相手への配慮を示し、用件を曖昧にしない範囲で使えばよい。ただ、前置きを外した管理職が、先輩との距離まで一段縮まったと思う必要はない。文が短くなっただけで、人の関係まで短くはならないのである。

古参へ何か頼むなら、部長は自分が何を教わってきたかから説明してもよい。長くなるなら部長の予定を延ばす。先輩の返事を急がせ、部下の作業だけを先へ進めるための簡潔さではない。

私は、言葉を一つ添えたことより、その言葉を使ってよい関係を見ている。昔の巨人を支えた者の前へ、短い定型句だけで先回りできる席は用意していない。

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世の中には、まだ教えることがある。話は変わるが、基本は同じだ。

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