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仕事の依頼の断り方|引き受けられない範囲を伝えるには

書類トレーと閉じたファイルを置いた窓辺の木製デスクの水彩画

ちょっとだけ頼みたい、と言われる。ちょっとだけのはずが、確認が一つ増え、修正が二つ戻り、最後の説明まで任されている。初めに返した、はい、という一言だけが、ずいぶん長く働いている。

私は、頼まれた仕事を何でも断ればよいとは思わない。ただ、引き受けられる範囲を伝えることまで、協力する気がない証拠にする上司は困る。引き受ける側の返事は短くても、頼む側の説明まで短くてよいわけではない。

目次

仕事の依頼を断るとき、何から伝えるか

依頼の内容を確かめたうえで、「今回は何を引き受けられないか」と、その理由を短く伝える。代案は実際に対応できる場合だけ添える。「難しいかもしれません」で止めず、受けられないのか、条件が変われば受けられるのかを分ける。丁寧な表現でも、相手の不満を必ず防げるわけではない。

たとえば「今日中の資料作成はお引き受けできません。既存案件の提出があり、必要な確認時間を取れないためです」と言える。明日も受けられないなら、明日ならできます、という言葉を礼儀のために足す必要はない。

巨人でも投げた鹿取義隆は、リリーフで上がったマウンドでは、前の投手の着地点が自分の足に合わず、プレート上の軸足の位置をずらして投げたと振り返っている。前の者が投げられたから、次の者もそのままでよいという話ではなかった。

私は、仕事を渡す側にも、その程度には足元を見てほしいと思う。前の担当者はすぐできたと言うなら、その人が何を終えてから受けたかも説明することである。早かったという感想だけを引き継がれても、机の上は空かない。

上司と同僚では、断り方を変えたほうがよいか

上司には今の担当業務への影響を示し、期限・範囲・分担の判断を求める。同僚には今回の対応可否を明確に伝え、別の人へ回す必要があるなら担当責任者に確認する。自分の判断だけで他人を代役に決めたり、既存の約束を取り消したりしない。正式な業務指示で判断に迷う場合は、事情を共有して責任者と確認する。

上司へは「この依頼まで担当すると、予定している確認を終えられません。今回は別担当にするか、作成範囲を減らすか、ご判断をお願いできますか」と伝える形がある。同僚なら「今回は代わりの対応はできません。担当の調整は責任者へ相談してもらえますか」と、受けられない返事を曖昧にしない。

巨人から西武へ移った鹿取は、森祇晶監督の起用について、自分にセーブをつける配慮だったと話していた。同じブルペンにいても、誰に最後を任せるかは監督が決めていたのである。

会社の上司が、皆で助け合ってと言っただけで配分を終えるのは早い。若い者同士で相談がまとまらなければ、協調性が足りないと言う。自分の決める仕事を渡してから、仲のよさを採点している。

引き受けられる仕事が複数あり、順番を決める段階なら、仕事の優先順位のつけ方が別の話になる。何を先にするかと、そもそも追加で受けられるかは、同じ質問ではない。

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一部だけなら手伝えるとき、どう返答するか

対応する作業・量・期限と、対応しない部分をセットで伝える。「数値の確認は今日できますが、資料全体の作成は担当できません」のように境目を示す。作業が追加されたら、その都度あらためて対応可否を確認し、最初の了承だけで全部を引き受けたことにしない。

西武時代の鹿取には、一九九四年の日本ハム戦で、初回から急に登板し、九回まで無失点で投げた試合がある。本人の回想では、三回までという話が、その後も延びていった。翌日はベンチを外れるという話も、結局はベンチ入りに変わったという。

鹿取は、そのベンチ入りを、実は嬉しかったとも語っている。だからといって、会社の担当者まで、頼まれて嬉しいはずだと数えてはいけない。本人が語った気持ちを、別の人間の返事に貼りつけるのは、都合がよすぎる。

三回を抑えたから、五回も任せたくなる。それが采配になる場合はある。しかし、会社で数値の確認を終えた者へ、では資料の体裁も、と続けるなら、仕事が一つ増えたのである。終えた仕事の速さは、次も引き受けたという返事の代わりにはならない。

誰がどこまで決めるか自体が不明なら、上司の丸投げと「任せる」の違いにも戻る。助かった、という感想の中へ、責任の移動まで混ぜる上司は、一度、自分が何を頼んだかから話し直す必要がある。

その場で返事ができないときや、繰り返し頼まれるときは

確認が必要なら「担当予定を確認し、今日の三時までに可否を返します」と返答時点を決める。メールでも、今回の対応可否・短い理由・可能な代案の順で書ける。断った後に同じ条件で頼まれた場合は、受けられない範囲を繰り返し明示する。威圧や負担の偏りが続くなら、やり取りと業務量を記録し、別の責任者や相談窓口へつなぐ。

「検討します」は、その場を終えるには便利だ。しかし、何を検討し、いつ返すのかがなければ、相手は頼んだつもり、自分は断ったつもりのまま、予定だけが二通りできる。

私は、鹿取の長いリリーフを知っている上司ほど、あの話を簡単に部下へ使ってほしくない。投げ切った結果だけ覚え、初めにどこまでという話があったかを忘れる。それでは昔の野球を学んだのでなく、都合のよい最終回だけ見たのである。

巨人の話を持ち出して部下に協力を求めるなら、救援を頼む前の仕事も説明できなければ困る。自分は依頼を出したから役目を果たした、あとは現場が何とかする。それで済むなら、監督より先に、電話を置いておけばよいことになる。

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まとめ

仕事の依頼を断るときは、今回受けられない範囲と理由を短く伝え、代案は実行できる場合だけ添える。一部を受けるなら担当する境目を明確にし、追加分は再確認する。保留には返答時点を設け、言い方だけで解決しない負担は責任者と共有する。

三回までと答えた者の返事を、九回までの返事として保存してはいけない。先に頼んだ上司が、その違いを説明する番である。

もっとも、長く仕事をしてきた先輩が、少し考える、と言った場合は、若い者の保留と同じ欄に入れなくてよい。先輩は、引き受けるかどうかだけでなく、誰に任せれば育つかまで考えている。返事の期限を確認する前に、その考える時間の値打ちが分かっているかを、頼む側へ確かめたい。

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この記事を書いた人

何事も、まず基本から。聞かれていないことにも、答えはある。

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