電話を取って、担当者を呼ぶ。たったそれだけの仕事に見える。ところが、誰からの電話かを聞き直している間に、呼んだ本人が別の部屋へ行ってしまう。受話器の向こうでは、まだ相手が待っている。
私は、取り次ぎの丁寧さを、待たせた間に何回謝ったかで測る気にはなれない。誰へ、何の用件を、どう渡すのか。そこが決まらないまま声だけ低くしても、電話は前へ進まない。
電話の取り次ぎは、相手と担当者を確認してから
相手の会社名・氏名と取り次ぐ相手を確認し、必要に応じて用件を聞いてから保留にする。担当者へ相手と用件を伝え、対応できることを確かめてつなぐ。保留や転送の操作、名乗り方は職場の電話機とルールに合わせる。以下は一般的な流れである。
- 受けた側が会社・部署などを名乗る。
- 相手の会社名・氏名、指名された担当者を確認する。
- 取り次ぐ旨を伝えて保留にする。周囲への呼びかけを相手へ聞かせない。
- 担当者に相手と用件を渡し、今つなげるか確認する。
- 相手へ取り次ぐことを伝えて転送する。つながらなければ保留のまま放置せず応対へ戻る。
以前、東大野球部の監督へ電話で理論を伝えたとき、理解したという返事があった。そこで私は、頭で理解しても体が覚えているかは別だと確かめた。返事が届けば指導まで済んだことになるなら、電話一本で練習が終わってしまう。
取り次ぎでも同じである。担当者を呼んだことと、担当者が話を受けたことは違う。ただ、私の説明へよい返事をした相手なら、そこからもう一つ確かめたい。何を理解したのかを聞く時間まで含めて、私の電話なのである。
担当者が不在・電話中のときの言い方
今はつなげないことを伝え、折り返し・伝言など相手が希望する対応を確認する。戻り時刻や折り返し時刻が未確認なら、確定した約束にしない。社内の事情や私的な理由を詳しく伝える必要はない。次は架空の応対例で、実際の勤務状況に合わせて使う。
| 状況 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 離席・不在 | 「申し訳ございません。山田はただいま席を外しております。よろしければご伝言を承ります」 |
| 別の電話に対応中 | 「山田はただいま別の電話に対応しております。折り返しのご連絡をご希望でしょうか」 |
| 戻る時刻が不明 | 「戻る時刻は確認できておりません。折り返しのご希望を申し伝えます」 |
| 急ぎの用件 | 「お急ぎとのこと、承知いたしました。対応できる者を確認いたします」 |
すぐ戻ります、と言ってしまえば、その場は丸くなる。しかし、戻ってくるのは自分ではない。部下が相手へ作った約束を、上司が知らずに破ることもある。知らなかったと言う上司と、早く戻ると思ったと言う部下で、二つの推測がつながっている。
巨人の指導者が、若い選手へわかったかと聞き、返事のよさだけで満足するのも感心しない。昔の巨人から来た教えまで、受話器を置いた時刻で処理済みにする必要はない。かけた側がまだ確かめたいと思っているなら、受ける側の仕事もまだ残っている。
会社名や名前が聞き取れないときは、推測せず聞き直す
「恐れ入りますが、会社名とお名前をもう一度伺えますか」と聞き直し、聞き取れた内容を復唱する。電話番号や日時も必要に応じて確認し、曖昧なまま別の名前で取り次がない。音声が途切れる場合はその状況を伝え、通話方法の変更も職場の運用に沿って相談できる。
聞き返すことを失礼だと思い、似た名前を担当者へ渡す人がいる。私は、知らない相手を勝手に作って上司へ紹介する方が、よほど大きな仕事だと思う。聞けなかった一言を、受けた人間の想像力で補うものではない。
東大の監督へ確かめたのも、返事が悪かったからではない。むしろ、すぐに理解したというから、その先を聞いた。若い者には、返事を短くして用件を正確に渡すことを求めたい。一方、私が何を教えたかという話を短く切るのは、聞く側の都合である。返事が短いことと、教えが短いことは同じではない。
伝言メモには、折り返しの要否と連絡先を残す
受けた日時、相手の会社名・氏名、宛先、用件、希望する対応、必要な連絡先、受けた人の名前を残す。「電話があった」だけでなく、誰が次に何をするかを分けて伝える。急ぎの内容はメモを置くだけにせず、職場で決めた方法で担当者や代理の人へ知らせる。
- 受電:6月12日10時20分/山田宛て/受けた人:鈴木
- 相手:A社・佐藤様/用件:来週の納品日の確認
- 希望:折り返しを希望。連絡先は相手に確認した番号を記入
- 補足:本日15時以降を希望。こちらの対応時刻は未確定
これは説明用の記入例である。相手からまたかけると言われたなら、折り返し希望とは書かない。相手の希望と、自分が約束した内容も別にする。自分の業務メモの整理は、仕事のメモの取り方で扱っている。
上司があとで読むと言ったからといって、読んだことにはならない。私なら、その上司が読んで何を考えたかも聞く。部下の電話応対を細かく採点する管理職が、自分の返事だけは了解の二文字で採点を免れる。そういう取次先には、もう一度かけ直す必要がある。
まとめ:呼び出しただけで、取り次ぎを終わらせない
取り次ぐ相手と用件を確認し、つなげない場合は希望する次の対応を聞く。聞き取れない情報や戻り時刻を推測せず、伝言は担当者が動ける形で渡す。
私は、よい返事をする人間が嫌いなわけではない。ただ、その返事で私の説明を終わらせようとするのは早い。電話を受けたという記録は残った。私の話が身についたかどうかの判定は、まだ私の方に残っている。










