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マルチタスクが苦手なときは?仕事の切り替えを減らす進め方

開いた書類と、順番を待つ閉じたファイルを描いた水彩画

資料を書きかけたところへチャットが来る。返事の途中で電話が鳴り、電話を切ると、何を書こうとしていたのかがわからない。忙しかったことは確かだが、夕方になっても完成したものが少ない。

マルチタスクが苦手という話を、すぐに本人の能力の話へ持っていくのは早い。仕事が何件あるかと、その仕事を何度持ち替えさせられたかは、別に数えたほうがよい。

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マルチタスクが苦手なら、一つずつ進めてよいか

複数の仕事を抱えていても、考える作業は小さな区切りごとに一つへ絞る方法がある。「資料を全部完成させる」ではなく「この項目を書くまで」と範囲を決め、切り替える回数を減らす。複雑な作業では、切り替える際に手順や途中経過を思い出す時間もかかる。

一九八三年、巨人へ入った斎藤雅樹は、初めから完成した横手投げの投手だったのではない。本人の回想では、上から投げていた頃は結果が出ず、野手へ転向する話もあった。多摩川で投球を見た藤田元司の助言を受け、腕を下げることになった。

投手でいたい斎藤は、その変更を受け入れた。そこで藤田が一言かけて、翌日には仕事が済んだわけではない。二軍投手コーチの木戸美摸とフォーム作りに取り組み、次の二軍登板までには三か月以上をかけている。

私は、この木戸の仕事を抜いてはいけないと思う。腕を下げると決めた話は短く説明できる。しかし、短く説明できることと、短い時間で身につくことは違う。会社の上司にも、指示が一行だから作業も一行で済むと思っている者がいる。

巨人の昔話なら、藤田の眼力だけで話を終えることもできる。だが、それでは、教えた後にその場へ残る者がいなくなる。立派な方針を発表する席にばかり人が集まる組織は、この先も木戸の説明を省くだろう。

割り込みで中断するとき、何を残せば再開しやすいか

中断する前に「どこまで終えたか」「次に何をするか」「確認待ちは何か」を短く残す。たとえば「集計済み。次は合計と元データを照合。営業の返答待ち」と書けば、再開地点を探し直す負担を減らせる。緊急対応が必要な場面では、記録より対応を優先する。

斎藤は後年、腕の高さを確かめる手掛かりとして、カーブの軌道を見ていたと語っている。いつも同じつもりで投げても、その日の状態は同じとは限らない。確かめるものを自分で持っていたのである。

途中までやった、という記憶だけでは、途中のどこかがわからない。上司は進んでいるかと聞き、担当者は進んでいますと答える。これで双方が安心してしまうから、後で続きを探すことになる。

記録の量を増やす必要はない。戻る場所がわかればよい。書き方そのものが負担になっている場合は、仕事のメモを取る意味と残し方も考えどころになる。記録を整える仕事ばかり増えて、元の仕事が止まっては困る。

ただ、教えた側の記憶まで若い者のメモへ移してはいけない。何を直すつもりで見ていたかを忘れたコーチが、前回の続きからと言う。前回を覚えている者が選手一人なら、教わっているのはどちらなのか。

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一つずつ進めると、ほかの仕事が止まらないか

一つずつ進めることは、一件が完全に終わるまでほかを放置することではない。返答待ちや処理待ちの間は別の作業を進め、次に確認する時点を決めておく。今どの仕事を先にするか決められない場合は、切り替え方ではなく、期限と優先順位の調整が必要になる。

順番そのものの相談は、仕事の優先順位のつけ方と分けて考えたい。今日中の仕事が三件あることと、三件の資料を一分ごとに開き直すことは同じではない。全部に触ったから全部が進んだ、という報告を私は信用しない。

木戸と斎藤の話も、三か月以上ほかのことを一切しなかった、という話ではない。投げ方を作るには、それだけの経過があったということである。時間をかけた実例を聞くと、すぐに何もせず待っていた話へ変える者がいる。

会社では、今の仕事を続けることより、新しい仕事へ反応したところがよく見える。新しく頼んだ上司には、当然、その反応しか見えない。全員が自分への返事の早さで評価すれば、担当者は仕事を進める前に、上司を順番に安心させることになる。

割り込みが多すぎる職場では、何を変えればよいか

すぐ応答する必要がある連絡と、まとめて確認できる依頼を職場で分け、集中する区間と連絡を見る時点を相談する。まず一つの作業で中断の理由を振り返れば、本人の工夫で減らせるものと、分担・連絡方法の変更が必要なものを分けやすい。安全上の連絡や職務上必要な即応は例外として守る。

指示する人数が多いほど、手厚い指導になるわけではない。朝に一人が腕を下げろと言い、昼には別の人間が上から投げたらどうかと言う。夕方、その二人が、本人の考えが定まっていないと評するようでは困る。

これは斎藤にそういうことがあったという話ではない。ひとつの仕事を見続ける者を置かず、助言だけ増やす組織の話である。藤田の役をやりたい者は多い。木戸の役を引き受けるとなると、急に別の会議が入る。

私は、担当者へ指示を一つ増やした上司には、その後の経過を見る仕事も一つ増えたと考えてほしい。言い終わったから手が空いたという顔で、別の部署へ次の助言に行く。その移動の速さまで、管理能力に数えてはいけない。

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まとめ

マルチタスクが苦手なときは、作業を小さく区切り、中断時には再開地点を残す。待ち時間は別の仕事へ使い、不要な切り替えを減らす。割り込みの多さや仕事量は本人の能力だけにせず、連絡のルール・分担・期限も相談する。

藤田が気づいたことを、木戸が現場で形にしていく。巨人の昔の指導を語るなら、眼力という言葉だけでは足りない。地味な役を受け持った者の判断まで含めて、ひとつの指導である。

だから私は、一度教えた者の判断を、後から来た役職者が簡単に上書きすることには反対だ。新しい部長になったから、新しい進め方になる。それでは、古い進め方を教えた人間の立場がない。

担当が替わっても、教えた者の判定は残しておけばよい。異動した後も一度は聞く。その人が退職していれば、呼んで確かめるくらいのことはできる。いま仕事を見ている者が納得しただけで、昔から見ていた者まで納得したことにしてはいけない。

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この記事を書いた人

何事も、まず基本から。聞かれていないことにも、答えはある。

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