洗剤が切れそうだから買ってきた。棚を開けると、同じ詰め替えが二つある。家族も気を利かせて、もう一つ買ってくる。ところが、毎日使う紙の方はなくなる。買い物の回数は多いのに、必要な物が揃っていない。
私は、予備を持つことには反対しない。ただ、何が幾つあるのか誰も知らない状態を、備えがよいとは言わない。棚を満たす仕事と、暮らしを止めない仕事は違う。
日用品のストック管理は、何から始めるか
まず使っている日用品について、使用中の物と未開封の予備を分けて数える。「一袋」と「中の何個」を混同しない単位にし、別の棚にある同じ物も確認する。収納用品や管理アプリを買う前に、手元の量が分かる状態をつくる。
松井秀喜のバットを作った久保田五十一は、一九九二年十二月、松井が星稜高校の山下監督と岐阜県養老町の工場を訪れたとき、初めて会ったという。のちに巨人で打つことになる選手を迎え、手の皮の厚さや指の節の硬さに、積み重ねた練習を見ていた。
私は、そこを見ていた職人を信用する。大きな体が来た、将来有望な選手が来た、それだけで分かった気になっていない。家でも、大容量と書かれた袋を見て安心する前に、その袋がいま幾つ残っているかという、ごく小さな確認がある。
予備は何個あればよい?上限と補充の目安
予備の上限と、買い足す目安を品目ごとに決める。使用量、次に買える時期、入手しやすさで必要数は変わり、全部を「予備一個」に揃える必要はない。普段の消耗品の管理と防災用の備蓄は区別し、棚を空けるために必要な備えまで減らさない。
一個減ったら一個買う。それで間に合う物もあるが、一個という札を全部に付ければ、考えたことにはならない。使い切る早さも違えば、売っている店へ行ける日も違う。数字が揃っていると、管理した側は気分がよい。使う側の都合は、まだ聞いていない。
松井の手を見た職人の話を聞いても、全員の手の寸法だけ集めればよいと考える者が出てきそうだ。練習でできた手を見るのと、欄を埋めるために手を測るのは違う。巨人に関わる仕事を、記入漏れのない表だけで引き継げると思われては困る。表を受け取ったあとにも、先輩の説明を聞く時間が要る。
家族の買いすぎ・買い忘れをどう防ぐか
買う物と数量を、家族が見られる一つのメモにまとめる。紙でも共有アプリでもよく、買った人が購入済みに直すところまで決める。似た商品の買い間違いがあるなら商品名や容量も残し、各自が別々の記憶で買い足す状態を避ける。
家族全員が親切で、それぞれに同じ洗剤を買ってくる。善意を責める必要はないが、三人とも自分が最後の一人を助けたと思っているのは、連絡がついていない。新しいアプリを入れても、買ったあとに誰も見なければ、立派な画面の中で買い物が終わっていないだけである。
久保田は松井の引退に際し、二十年にわたる野球への真剣な姿勢だけでなく、用具担当者にも変わらず丁寧に話しかけてくれたことを振り返っている。巨人の看板を背負う打者の仕事は、打ったあとにも残る。私は、用具を支えた人への態度を、成績表の欄がないから省略してよいとは思わない。
ストックの収納場所と、続けやすい見直し方
予備の置き場所を家族で共有し、重ねすぎず残数を見渡せるようにする。使う場所の近くでも、管理しやすい棚でもよいが、メーカーの保管表示を優先し、洗剤などは子どもやペットが触れにくい場所へ置く。買い足したときや使い切ったときに、メモと実物のずれを直す。
私は、毎晩すべての数を数え直すほどの仕事を、家庭へ持ち込みたくはない。数え続けないと分からないほど奥へ詰め込み、その不便を几帳面さで補うのは順番が逆だ。立派な管理表を作った人だけが分かる棚も、家族で使うには少々立派すぎる。
ただ、誰が見ても同じに扱えることを、何にでも求めるのは感心しない。松井のバットを作った仕事まで、道具を補充した記録の一行で片付けられては困る。その一本を使う人の手を見て、長く向き合った者がいる。私は、用具担当の説明は長いからと短縮するような会議には、まず昔の巨人の話を追加する。
まとめ
日用品のストックは、手元の数を確認し、品目に合った上限と補充の目安を決め、家族で買い物メモと置き場所を共有する。続かない細かな記録より、実物とメモを無理なく直せる仕組みを選ぶ。
洗剤の残りを確かめる用事なら、短く済む方がよい。紙の予備が見つかれば、それで話は終わって構わない。何があるか分かることと、その物について語れることは、別の仕事である。
しかし、松井の道具を支えた職人の話まで、在庫確認と同じ時間で済ませるつもりなら、私はその時計を基準にしない。洗剤は残数だけ聞いて帰ってもよい。昔の巨人の仕事を聞く者が、最初から終了時刻を決めているのは順番が違う。










