図書館の検索では見つかった。それなのに棚へ行くとない。画面には確かにあったのだからと、同じ棚を三往復する。歩数は増えるが、探している本との距離は変わっていない。
本を探すには順序がある。題名を入力して終わりではないし、棚を眺めた時間の長さで読書家になるわけでもない。もっとも、新刊の表紙だけ眺めて時代が分かった顔をするよりは、まだ棚の前で困っている方が見込みはある。
まずは蔵書検索。題名と著者名を分けて探す
図書館の公式サイトや館内端末にある蔵書検索(OPAC)で探す。題名が分かるなら書名欄、著者が分かるなら著者名欄を使い、結果の詳細を開く。見つからなければ題名の一部に絞り、入力条件も確かめる。
同じ題名でも版や巻、出版社が違うことがある。必要な巻と出版年を確認してから所蔵情報へ進む。検索欄の名称や一致条件は図書館によって違うので、その画面の案内を優先する。
三井康浩は、スコアラーになった当初、選手に話を聞いてもらえず悩んだと振り返っている。そこで選手が知らないことを話せるよう準備を変えた。1994年の10・8決戦前日、長嶋茂雄から今中慎二を打つ方法を尋ねられたときには、蓄えていた球種ごとの動作の違いを取り出せたのである。
私は、調べる係の名札だけで、誰が何でもすぐ答えられることにする部長を信用しない。一方、昔その資料を作った者を、検索欄ができたから不要とする仕事も任せない。目録が新しくなっただけで、調べた人間の格まで並び替わるわけではない。
「何か役立つ本はないか」も悪くないが、急ぎの調べ物には広すぎる。今中への対策を聞かれて、野球全般の資料を山ほど並べても困るだろう。検索窓に長い願望を書き、答えが出ないと機械を疑う。まず、自分がどの本塁へ走っているかを決めてもらいたい。
検索結果は四つの欄を確認してから棚へ行く
本の詳細では、所蔵館・配架場所・請求記号・状態を一組で確認する。検索に出ることと、今いる館の棚からすぐ借りられることは別である。館外貸出の可否も合わせて見る。
| 確認する欄 | 何が分かるか |
|---|---|
| 所蔵館 | どの図書館が持つ本か。別の館なら取り寄せの条件を確認。 |
| 配架場所 | 一般書・児童書・書庫など、館内で扱う場所。 |
| 請求記号 | 本の背ラベルと照合する、番号や文字の組み合わせ。 |
| 状態 | 在庫・貸出中・展示準備など、現在の利用状況。 |
「在庫」でも「禁帯出」などの指定があれば館外へは借りられない。貸出中の本の予約や他館からの取り寄せは、利用資格・対象資料・受取方法を各館で確認する。
三井の回想では、今中が振りかぶる際の左手首の見え方に球種ごとの差があり、蓄積した研究を映像で説明したという。打撃コーチの中畑清が、野手へのミーティングも任せようと提案した。資料を持つだけでなく、必要な場面へ取り出せたのである。
勝負がそれ一つで決まったなどとは言わない。だが、長嶋のひと言だけで選手が奮い立った、で昔の巨人を片づけられても困る。表で目立つ人の後ろに、どこを見ればよいか調べた人がいた。私はその名も並べてから、巨人を語ってもらいたい。
在庫なのに棚にないときは、別置と書庫を確認する
配架場所が合っているかを見直し、請求記号を省略せず背ラベルと照合する。大きい本が別の段へ置かれる場合や、展示などで通常の棚にない場合もある。見つからなければ検索結果を職員へ示す。
番号だけでなく、その後の文字や巻の記号もメモする。ラベルの構成や並べ方は館ごとに異なり、「二段目は必ず著者名」とは限らない。「書庫」と表示される本は、利用者が勝手に入らず、画面やカウンターの案内に従って出納を依頼する。
棚にない本を、ないままにしておく必要はない。しかし、自分で近くの本を移し、分かりやすい並びに直すのも違う。他の人はその館の記号で探している。自宅の本棚を新刊順に替えた話と、公共の棚の話は分けるべきである。
それでも、昔の名勝負を扱う本が奥へ引っ込み、新しい成功法だけが入口で胸を張っていると、私は配置に意見を言いたくなる。刊行年が新しいことと、先に読ませる値打ちがあることは同じではない。長嶋の話をするのに、近道だけ覚えた本から入ってもらっては困る。
題名が分からないなら、知りたいことを職員へ伝える
特定の本が決まっていないときは、テーマに関する言葉で検索する。検索項目に件名や内容紹介があれば使い、絞れなければ知りたい内容や用途を職員へ相談する。調べた語と候補も示すと話を進めやすい。
例えば「野球の本」だけでなく、「試合の記録の読み方を、初心者向けの本で知りたい」と伝える。棚で見つからない場合なら、本の題名・所蔵館・請求記号が分かる画面や印刷票を見せられる。個人の貸出履歴や連絡先まで周囲へ見せる必要はない。
司書に尋ねるのを恥ずかしがり、十分迷ってから帰る人がいる。専門の人に聞くのは、自分の知識が空だと届け出ることではない。長嶋が三井へ今中の対策を尋ねたからといって、長嶋の打撃が消えたわけではなかろう。
ただし、薦められた本へ何でもうなずけばよいとも思わない。私なら巨人の本は、誰が何を見て書いたかまで確かめる。表紙の大きな人物写真だけで選ぶのは若い人に任せる。もっとも、長嶋が表紙なら最初に手に取る。中身を確かめるにも、まず開かなければ始まらない。
まとめ
図書館の本は蔵書検索で候補を出し、所蔵館・配架場所・請求記号・状態を確認して探す。棚にない本や題名の分からない調べ物は、検索結果や知りたい内容を職員へ伝えて相談する。
三井は、今中について研究してきた違いを、長嶋に尋ねられた場面で映像とともに示した。持っていた資料が、その一件へ出てきたのである。私は、検索結果が多いことと、調べる役を果たしたことを別に見る。
図書館では、書名や著者だけでなく、分類と所蔵先を確かめれば本へ近づける。ただ、その操作に慣れた管理職へ、古い資料を知る者の説明まで短くする権限は渡さない。何を探す値打ちがあるかは、まだ別の判断である。
昔の巨人の一冊を取り出したら、目次だけで十分という部長もいる。私は、目次にない人の関係まで聞いてもらいたい。求めた本が見つかった日に、その説明を聞く仕事まで終わることはない。
図書館の返却日は守っても、古参への質問を終える日まで同じにする必要はない。本を返した後にも、部長が持ち帰る宿題は残せるのである。











