鏡を磨いたのに、白い跡が残る。力を入れると今度は細かな傷が増える。映る顔ばかり見て、映す道具の扱いは見ていなかったということである。
私は、鏡を拭く時間を惜しいとは思わない。ただ、何の鏡かも確かめず、強い物でこすれば清潔になると思う態度は認めない。手入れにも、相手を見る目が要る。
最初に、一般鏡か加工された鏡かを確かめる
くもり止めなどの加工がある鏡は、専用の手入れ方法を優先する。
型番・説明書・設備メーカーの案内で加工を調べる。一般鏡用の研磨材や薬剤を加工面に使うと、効果を損なうことがある。分からなければ強い洗剤や研磨を試す前にメーカーへ確認する。
金田正一が巨人へ来たとき、私たちは名前の大きさだけで声をかけて迎えたのではなかった。まず、どんなふうに動くかを見ていた。よく食べ、よく練習し、よく走る。その姿を見て、野球に真剣な男なのだと分かっていった。
それから、皆で助けようという気持ちになったのである。歓迎の言葉が先に並び、後から働きを探す順ではない。私は、新しい物を持ってきた係が、買ったその日に古い物を査定し始めるのを、この順番とは認めない。
新しい洗剤も評判だけで採用したくない。鏡のほうに何の加工があるかを見ず、買ってきた物の強さばかり自慢する。外から来た物には詳しく、今ある物には無頓着な家は、私は信用しない。
ほこりと手あかは、傷を増やさず取る
砂やほこりを無理にこすらず、指定された柔らかい布や洗剤で手入れする。
鏡と周囲の枠の説明に従い、汚れを落とした後は洗剤分・水分を残さない。布の汚れも確認する。手あかに効いた方法が、浴室の白い汚れにも同じように効くとは限らない。
よく拭いたという人ほど、使っている布を見せたがらない。前の汚れを持ったまま、新しい面を何度もなでている。働いた回数は増えても、やったことは移動である。
私は、基本の道具を見せられない者の仕上がりを評価しない。鏡に顔が映れば合格というのなら、曇りの向こうで頷いているだけの管理職でも務まる。
浴室の白い汚れには、使える方法を絞る
水あかなどの落ちにくい汚れは、鏡の種類に適合するメーカー指定の方法で扱う。
TOTOは一般の浴室鏡とくもり止め鏡を分けて案内している。酸性洗剤・クレンザー・メラミンスポンジを全ての鏡に勧めることはできない。洗剤を使う場合は表示を守り、塩素系と酸性など異なる薬剤を混ぜない。
白い物なら何でも同じ汚れだと思うと、掃除の話は早い。間違ったまま早く進む点では、なかなか近代的である。私は早さより、最初に何を見たかを聞く。
巨人へ来た金田も、名前だけを並べて分かったつもりにはならなかったという。道具の名前を知っただけで、目の前の面まで分かった顔をする係には、まず見る仕事が残っている。
残る跡が、汚れなのか傷みなのかを見直す
傷や腐食、加工の傷みが疑われる跡は、こすり続けずメーカーへ相談する。
黒い点や端の変色、線状の傷は、表面の汚れ以外の可能性がある。落ちないことだけを理由に力や薬剤を足さない。日常は、使った後の水滴を指定の方法で取るなど、負担の少ない手入れを続ける。
私には、直らない所を磨く熱心さより、そこで手を止める判断のほうが難しく見える。自分が触った物を、自分の力で全部良くしたことにしたいのであろう。
私は道具に年季があることまで責めない。古くからそこにある鏡の小さな跡より、新品を持って来た者が何も聞かずに交換を決めるほうが、よほど家の顔を傷つける。
まとめ
鏡は加工の有無と汚れを見分け、適合する柔らかい道具で手入れする。落ちない跡を研磨で追い続けない。
金田は巨人へ来たというだけで、こちらの見方を決めてもらったわけではない。毎日の練習や走り方を見てから、皆で支えることになった。私は、外から来た物の評判より、前からいる者が何を見たかを重く扱う。
鏡の手入れも、製品の指定を守ったうえで、長く使っていた者に最後の顔を見てもらえばよい。新しい洗剤の係が明るくなったと判定しても、その家の鏡を任せる資格まで増えたわけではない。
古い跡が残っているという報告なら、それを見てきた年数の話も先に聞く。買ったばかりの道具の説明は、その後でよい。鏡の前に立つ順番まで、商品の発売日で入れ替える必要はない。
きれいになった鏡へ最後に私が立つ。それでまだ気になる所があれば、若い担当者の完了欄は待たせておく。鏡の仕事が早く終わっても、見る人間の引き継ぎは、同じ速さでは終わらないのである。











