資料の左上か右上かで、配る前から会議が始まっている。ホチキス一つに職場の流派があり、肝心の資料はまだ誰も読んでいない。
私は留め方を雑にしてよいとは思わない。だが、留める位置を覚えたところで、順番の違う十枚が正しい資料になるわけでもない。
基本は横書きなら左上、縦書きなら右上を目安にする
読む方向とページのめくり方から留める位置を考え、提出先の指定があれば優先する。
これは一般的な一か所留めの目安。用紙が横長かどうかだけではなく、文章が横書きか縦書きかを見る。文字や図を針で隠さない余白を取り、読む人がページを開ける位置を選ぶ。正式な提出物や製本は指定の綴じ方を確認する。
左右を正しく覚えた人でも、表紙だけ逆さに入っていることがある。型を知ったことと、目の前の紙を見たことは違う。
私は、細部にうるさい人を嫌いではない。だが、細部だけを見て全体を取り逃がすと、留め方の検査のために資料を作ったようになる。
縦横混在は、全体をめくってから留める
用紙を揃えた状態で、読むときの回転方向と裏面の向きを確かめる。
縦長・横長の用紙が混在する場合は、基準の向きを決めて一部ずつめくる。両面印刷なら裏面が上下逆になっていないかを見る。左上など一つの位置に留めれば必ず読みやすいとは限らない。複合機の自動留めは原稿のセット向きや機器の設定も確認する。
1983年の日本シリーズ第3戦、巨人は同点の九回、二死走者なしから連打を続け、最後は中畑清の一打で勝った。私は西武を率いていた。同じ一枚の結果を見ても、あと一人で終わるはずだった側と、そこから攻めた側とでは、閉じる前に見る所が違うのである。
私は、最後までそろったという部長の報告にも、どこまで見たかを聞く。もっとも、昔の巨人の資料へ一枚多く説明が付いていても、全員の枚数へ合わせて外す必要はない。束を薄くする仕事と、教えた年月を薄くする仕事は同じではない。
資料も、最初の一枚がきれいだから全部きれいだとは限らない。最後まで一度めくるくらいの手間を、私は惜しまないほうがよいと思う。
ホチキスと針は、対応枚数を確かめる
本体と針の指定に合う紙の量で使い、厚い束を無理に押し込まない。
対応枚数は本体・針・紙の厚さで異なる。枚数が多いなら対応した道具や別の綴じ方を使う。針が曲がったり裏で浮いたりした場合は、リムーバーなど適切な道具で外してやり直す。針を指で無理に伸ばさず、外した針を机へ残さない。
力を入れれば大抵の仕事が通ると思っている人がいる。ホチキスの前では、その考えが目に見える形で曲がる。
道具の限度を守るのは弱気ではない。小さい本体に大きい束を入れ、最後は人の握力を責めても、針は長くならないのである。
配る前に、順番と綴じ損じを確認する
ページの抜け・重複・上下と、針の状態を一部で確認してから同じ形で揃える。
一部を見本として、めくりやすさと裏面を確認する。読み合わせや差し替えが多い資料なら、クリップなど外しやすい方法が向くこともある。スキャンや回収の予定、提出先の指定も踏まえて、最初から留めない選択を検討する。
私は紙の資料が好きだと言うが、全部ホチキスで固めろとは言っていない。差し替えがあると分かっている資料を、誰より早く綴じることにも、妙な頑固さがある。
昔の巨人の名簿なら、背番号まで確かめてから閉じたい。会議資料でも、せめて二ページ目の欠席くらいは見つけて配ってほしい。
まとめ
文字の向きとめくり方、提出先の指定から位置を決め、対応枚数・ページ順・針の裏面まで確認する。
巨人は九回二死からも仕事を続けた。私は、もう終わりだという外形だけで閉じる習慣を、そのまま資料の点検へ持ち込まない。最後に何が残っていたかを見る余地がある。
ホチキスは、読む向きや枚数、道具の条件を確かめて留めればよい。ただ、昔の判断の説明が数枚続くなら、若い部長の要約へ合わせて一枚に減らす必要はない。針が足りなければ、綴じる方法の方を変えればよいのである。
全員同じ厚さが公平だという部長には、自分の資料を先に短くしてもらいたい。先輩の説明が厚いことと、部長の話が長いことは違う。何を重ねてきたかを聞く前に、紙の厚さだけ量られては困る。
私は、束を留めた係へ、中身の最後の判定まで任せる気にはなれない。針は一か所でも、教えてきた者の目は、まだその外から全体を見ている。











