MENU

忘れ物を減らす方法|出発前の確認と、持ち物を戻す場所の決め方

野球場のクラブハウスで、かばんと財布・鍵・ハンカチを揃えた水彩画

玄関で靴を履いてから、鍵がないことに気づく。机へ戻ると財布もある。二つ持って出たら、今度は机の上で充電していた電話が鳴る。家を出るだけで、同じ廊下を何度も往復している。

私は、こういうときに気合を入れ直すだけでは足りないと思う。昨日も同じ場所へ取りに戻ったなら、今日の注意力より、昨日の置き方に用がある。反省した本人だけが玄関に立ち、持ち物はそれぞれ好きな場所で待っている。

目次

忘れ物を減らすには、まず何を変えるか

毎日持つ物は戻す場所を決め、帰宅時にそこへ戻す。鍵・財布・通勤用のかばんなど、よく探す物から始める。玄関に集める場合も、通路や扉をふさがず、鍵は外から見えたり手が届いたりしない場所に置く。

置く場所を毎朝考えていては、片づけたことにならない。きれいな棚があっても、帰って来た本人が使わないなら、その棚は持ち物の定位置ではなく、家具の置き場所である。私は、小物入れを買う前に、昨日の鍵がどこにあったかを聞きたい。

巨人の柴田勲は、長嶋茂雄が引退すると思った一九七三年、使っているグラブを記念に譲ってほしいと頼んだと振り返っている。ところが長嶋はもう一年現役を続けた。頼んだ方には、待つ時間ができたのである。

名選手のグラブなら、誰が使い、誰に渡るかまで話が残る。自分の財布になると、たぶんあの辺で済ませる。この扱いの差は何なのか。高価な財布を選ぶ前に、帰宅後の所属くらいは決めておいてよい。

前日に準備できない物はどうするか

前夜に入れられる物と、朝に使ってから入れる物を分ける。書類や返却品は予定を確かめて先にかばんへ。充電中の電話や冷蔵庫の弁当などは、出発前に目に入る短いメモへ残す。食品や薬は、それぞれの保存条件を優先する。

全部を前夜に済ませようとして、朝に必要な物までしまい込むと、翌朝また取り出す。準備をしたという実績だけが増える。弁当は冷蔵庫にあるのに、空の保冷バッグを立派に用意しても、昼飯はついて来ない。

柴田が頼んだグラブは、一九七四年の引退セレモニー直前に渡されたという。長嶋が本人のところへ来て、約束していた品を手渡した。柴田は、覚えていてくれたことに感激したと語っている。長い間隔があっても、渡す相手と品物が揃っていた。

ただし、長嶋が覚えていたから、私の弁当も記憶だけで出て来るという話にはならない。あの人の記憶を褒めることと、自分の朝を任せることは別である。名選手の話を聞くたびに、自分の準備まで名人になったような顔をするのは感心しない。

広告

持ち物チェックが続かないときは

毎日の必需品と、その日だけの追加品を分け、出発前の同じ場所で実物を確かめる。たとえば「鍵・財布・電話」に、その日の社員証や返却品を足す。項目が多すぎるなら、使わない物を外し、かばんを替えた日には移し忘れも確認する。

昨日と同じ一覧へ印をつけていても、今日の荷物を見たとは限らない。かばんの中身より、チェックを終える手つきの方が早くなる。立派な一覧を作って安心する人間は、その一覧を入れたかばんまで忘れかねない。

柴田の回想では、グラブを受け取ったそばに土井正三もいて、欲しかったのにという思いを口にした。長嶋が何を渡したかだけでなく、誰が受け取ったかにも重みがあった。受け渡しを完了と書くなら、相手の名前まであってよい。

それにしても、長嶋の最後のグラブを、単に革製品一点と記録してよいものか。数が合えばよいという人は、その横に新品を置いても同じだと言いかねない。物を数えることは必要だが、数え方まで知らない者に、揃っていますと締めてもらうのは早い。

外出先で置き忘れないためには

席や場所を離れる前に、机・椅子・足元と持ち物を確かめる。小物を何か所にも広げず、使い終わった物をかばんへ戻す方法もある。紛失防止タグは補助であり、通知条件や電池、通信環境によって働き方が異なる。携帯品の確認そのものは省かない。

電話は机、上着は椅子、袋は足元という置き方なら、立ち上がるだけで三か所の引き継ぎが発生する。荷物を増やした覚えはなくても、管理する場所は増えている。出る直前に慌てるより、使ったあとに戻す方が、私は落ち着く。

持ち物を知らせる道具を使うのもよい。ただ、画面に出ていないから忘れ物はないと言われると、その道具の面倒は誰が見るのかと思う。通知を信じた本人と、電池の切れた機械とで、互いに相手の仕事だと思っているようでは困る。

私は、長嶋のグラブが今どこにあるかを語れる人間には、少し長く話を聞く。自分の傘の所在もわからない者が、その話を手短にと言っても、物の扱いを論じる順番が違う。所在を確かめる習慣は、聞く相手を選ぶところまで続いている。

広告

まとめ

忘れ物防止は、定位置へ戻す、前日に入れる、朝に加える物だけ残す、出発・退席前に実物を見る、という流れで考える。毎日の必需品とその日の追加品を分け、道具や通知は補助として使う。気をつけるという反省だけで済ませない。

長嶋が柴田との約束を覚えていたことは、やはりよい話である。どこへ置いたかだけでなく、誰に渡すつもりだったかまで残っていた。持ち物の管理を、置き場所の話だけで終えるには惜しい。

財布と電話は毎朝の一覧で確かめればよい。しかし、長嶋のグラブまで同じ一枠に収める必要はない。あれだけは一枚、別の紙を用意する。その違いを面倒と言う者には、まだ預けられない。

関連記事

この記事を書いた人

何事も、まず基本から。聞かれていないことにも、答えはある。

目次